はてなインターネット文学賞「わたしとインターネット」
はてなインターネット文学賞「わたしとインターネット」
自分にとって、インターネットが身近になったのは、そのコミュニケーション手段が「パソコン通信」と呼ばれていた頃。
ニフティと契約をして、現代より高い通信料を払いながら、ネットで出会った人達とのコミュニケーションを楽しんでいた。
自分より前の世代の、Hamなどと呼ばれていた「アマチュア無線」に代わるものになるのだろうか。
当時、インターネットを通じてのコミュニティを持っている人はそれほど多くはなく、趣味の範囲で集まる仲間といった感じだった。
他愛もない会話から、分からないことを質問すると誰かが答えてくれる、Yahoo!知恵袋のような要素もあった。
そして、次に自分の元にやって来たのが、PostPet(ポスペ)。
So-net(ソニーコミュニケーションネットワーク株式会社)から販売された、可愛いペットが手紙を運んでくれるメールソフトだ。
テディベア、ウサギ、イヌ、ネコなどがメールを運んで来てくれるものだが、今考えると、ちょっと面倒くさい。
しかし、当時、まだ付き合っていない女性がそれを気に入っていて、彼女に対する自分の恋心を知った共通の友人が自分と彼女の橋渡しとして勧めてくれた。
彼女は、ウサギが好きで、自分はイヌを選んだ。
PostPetでは、自分で部屋を作れるのだが、そこにメールを届けに彼女のウサギがやって来ると、なんだかとても身近になったようで、すごく嬉しかった。
可愛いキャラクターを介して、少しずつ会話も長く続けられるようになり、半年近く経った冬に、一緒にスキーに行くことになった時は、この世の幸せを手に入れたかのように歓喜した。
『よっしゃー!』
時が経ち、今はお互いに別の人と一緒に居るが、PostPetのアバターが、ずっと懐かしい思い出を心に留めてくれている。
時代は進み、今は様々なコミュニケーションツールがあり、やり取りもより便利で、想像力を発揮する間もなく、リアルに画像や映像が送られて来ることで展開も早い。
Zoomなど、リアルタイムにやり取りが出来ることは、とても便利で仕事の効率も格段に上がっている。
今も今なりの関係性を構築出来るし思い出も残せるが、ちょっと不便でも、やや長い待ち時間に熟成される心も大切だと思う。
人の感情が生まれてから言葉になるまでの時間は、まだ機械の高速化に追い付いておらず、それを機械の速度が越えた時、相手を思いやる感情を飛び越えて自身の意見を優先させてしまうのかもしれない。
インターネットは非常に便利で、普及により、それまで救えなかった人を救っているのは確か。
反面、躊躇なく人に投げかけられる誹謗中傷を目にする度に、「パソコン通信」や「PostPet」の少し考える時間を待つ時代の良さを思い出す。
インターネットに触れて、自分は20年で今に至ったが、これから20年後の人達は、今を、どんな気持ちで振り返るのだろうか。